• 『背影的記憶』
    著:長島有里枝 訳:陳嫺若 
    原題: 「背中の記憶」
    臉譜出版 2014
    189×130×20 mm 

  • 『佐藤可士和的超整理術』 第二版
    INSIGHT 1
    著:佐藤可士和 訳:常純敏
    原題: 「佐藤可士和の超整理術」
    出版:木馬文化 
    発行:遠足文化 2014
    190×130×15 mm

王志弘

Wang Zhi-Hong | ワン・ジーホン

自身の経験と想像を投影する

こうした作家ものの本は、つくっている過程で作家とのやりとりはあるのでしょうか。

王  ないことが多いですが、『背中の記憶』(『背影的記憶』)の写真家の長島有里枝さんは、少し前に台湾に来ていました。そして自分の翻訳書を手がけたデザイナーに会ってみたいと、僕のところを訪ねてくれたんです。『背中の記憶』は、彼女の幼少期の記憶を綴ったエッセイ集です。原書のブックデザインを手がけたのは服部一成さん。長島さんは服部さんに「写真を使わないでほしい」と注文したそうです。読者のイメージを限定したくないという理由でした。服部さんは彼女の要望に応え、また、彼の思う彼女の繊細さをさらに引き出すために、ごく細い線の文字をデザインした。彼女の本質をよく表したデザインだと思います。

作者の幼少時代の話をしている本ということで、僕は翻訳書を手がけるにあたり、自分の子ども時代の経験に立ち返ってデザインを考えていきました。僕たち大人は、文字をどう書くことが正しいのか知っている。けれども子どもの頃は、そんな制約はあまり受けなかったはずです。だからカバーに入れた文字は、書き順をあえて間違えたり、「田」という字の中を「+」ではなく「×」と入れてみたり、自由気ままに書いてみました。自分の小さい頃を思い出しながら、もし僕がいま子どもだったら、これらの文字をどう書いただろうと考え、正しい書き順を意識的に忘れてデザインしたのです。ですから、この本づくりのときも、草間彌生のときと同様、僕は著者の長島有里枝と同じ視点に立ち、自分の経験と想像を投影しながらデザインを考えていきました。

本を開くと、別丁扉でまず手が止まります。

  鏡面を思わせるメタリックペーパーを入れました。それは本をめくったとき、最初に目に飛び込んでくるのが読者自身の顔であってほしいからです。この本は著者の記憶が綴られたものですが、読者にも自身の記憶があるはずです。別丁扉の読者自身を映し込む鏡が、彼/彼女自身の記憶をも掘り起こしてくれる。そんな暗示の作用があるんです。「想うことや考えることがなされなくなっていけば、結局は忘れ去られていく」と長島さん自身も言っています。原書には、この鏡面紙はありませんでした。これは、僕の考えで入れたものです。

前後の見返しで、色を変えているんですね。

  カバーデザインと同じく、子どもになったつもりでデザインを考えたんです。一般的には、見返しは前後とも同じ色、紙を貼り付けますが、子どもの視点で考えれば、そういう制約を受けず、もっと遊び心を持ってもいいはずです。なので、わざと2種類の色を使いました。帯のデザインも遊び心です。

日本語と中国語のタイトルが重なるように入っていますね。

  『背中の記憶』と『背影的記憶』、日本語と中国語のタイトルで文字数が同じであり、中の2文字だけが異なるという構成だったからです。これを2列に並べると、似たような言葉が重複してくどくなってしまう。揺れ動く記憶のイメージを表現するためにも、重なり合うように配置しました。

アートディレクターの佐藤可士和さんの著作も手がけられているのですね。

  佐藤可士和さんの本を最初に台湾に紹介したのも僕でした。これは『佐藤可士和の超整理術』(『佐藤可士和的超整理術』)の二版目のカバーです。初版は、「空間・情報・思考のもやもやを一刀両断!」という帯のキャッチコピーに合わせ、表紙に赤い斜線を大きく入れたデザインでした。再版ではまったく違うアプローチをしたいと思い、デザインを一変させました。彼の作品によく見られる赤、黄、青、緑の4つの色面を置いています。カバーという空間のなかで、佐藤可士和さんを象徴する色を整理してブロックごとに仕分け、きれいに並べている。4つは同じ内容を反復していますが、これは佐藤可士和さん自身が大きく影響を受けているアンディ・ウォーホルのポップアートから複製という手法を模したものです。デザインを整理することで、タイトルの「整理」とかけています。