• 『銀色的月球』
    著:王大閎 
    台兆國際(通俗社) 2008
    210×150×23 mm

  • 『銀色的月球』
    台湾モダニズム建築を牽引した1918年
    生まれの建築家、王大閎の文集

  • 『為什麼設計』 INSIGHT 3
    著:原研哉・阿部雅世 
    訳:蔡欣芸・李玟瑩 
    原題: 「なぜデザインなのか。」
    出版:木馬文化 
    発行:遠足文化 2009
    201×142×20 mm

王志弘

Wang Zhi-Hong | ワン・ジーホン

見返しをつける習慣がないということは、製本所に依頼するのも大変だったのではないですか。

  この本では手作業で貼り付けてもらいました。

そうなんですか。日本では機械で貼りこむことができるんです。

  加工でもっと苦労した本があります。『銀色的月球』という本です。

三方小口塗装。本の小口をすべて黒く塗装しているんですね。

  はい。いまでは台湾でもこの技術ができるようになりましたが、『銀色的月球』をデザインした2008年当時、台湾国内に小口塗装をしてくれる加工業者は一つもなかったんです。そこで、加工業者にお願いして、手作業でやってもらいました。本を何冊も高く積み上げ、スプレー塗料を用いて、手作業で色を吹き付けてもらったんです。現在ではシルクスクリーン印刷で色をつけるんですが、このときは手作業だったので均一に色をのせることが難しく、少しムラになっています。けれど当時はこれ以外に方法がなかったのです。この本は、香港デザイン協会が主催する「世界デザイン大賞」で、葛西薫審査員賞と銀賞を受賞しています。苦労してつくりあげた本でした。この小口塗装のような特殊加工は、一定の需要がなければ、対応してくれる加工業者を見つけるのは容易ではありません。たとえば台湾では上製本をあまりつくらないので、ブックカバーをかける専用の機械もないのです(注:日本には専用機がある)。

確かに、台湾の書店を見ていて気づいたのは、上製本が非常に少ないということでした。ほとんどが並製本にカバーをかけたものか、あるいはがんだれ表紙の並製本です。これは台湾のいまのトレンドなのですか。

  トレンドではなく、習慣です。日本には文庫本という存在があり、特に文芸作品はまず上製本で出版され、年月が経つと文庫化されますよね。しかし台湾には携帯に便利な文庫本がないので、ほとんどの本は並製本でつくられる。特別のニーズがない限り、上製本でつくられることはありませんし、上製本だとしてもカバーをかけないことが多いのです。

なるほど、並製本の多さは、出版文化の違いから来ていたのですね。

  初版と再版でカバーデザインを変更するのも、台湾ではよくあることです。

中身はそのままなのですか?

  まったく同じです。新たにパッケージし直したほうが売れると出版社が判断したとき、このような方法がよくとられます。もちろん、再版時に必ずカバーを変えるとは限りません。初版から3年、5年と経ち、売れ行きが低迷しはじめた頃に、カバーデザインを変えて本を新たにパッケージし直して、書店のイベントとタイアップすることで販売を刺激するという手法もよくとられています。

原研哉・阿部雅世著の『なぜデザインなのか』(『為什麼設計』)も、カバーデザインが変わっているんですね。

  これは再版を機に変更しました。この本の場合、初版と再版のデザインは文字の組み直しという意味合いが大きく、コンセプトは共通しています。このデザインでは、まずグラフィックをつくりました。原研哉さんは日本、阿部雅世さんは日本人ですがドイツ在住です。阿部さんはドイツにいる人の視点から、原さんとデザインについて語り合っている。それは、地球の両端を結ぶように二人の対談が進められていると僕は感じました。一人は東京、一人はベルリンにいて、その2か所を引き結ぶ線のビジュアルイメージをデザインに起こしてみました。また、彼らの対話を抜粋して、カバーに掲載しています。著者名は透明箔を押しています。