• 『決鬥寫真論 篠山紀信 中平卓馬』 SOURCE 5
    著:篠山紀信、中平卓馬 訳:黃亞紀 
    原題: 「決闘写真論」
    臉譜出版 2013
    210×150×21 mm

王志弘

Wang Zhi-Hong | ワン・ジーホン

透徹した思考が生む静かで熱きデザイン

文=雪朱里

台湾のブックデザインを牽引してきた一人が、王志弘(ワン・ジーホン)だ。フリーランスのブックデザイナーとして独立して15年。文芸書からアート・デザイン書まで年間40数冊を手がけ、台湾の書店では、彼がデザインを手がけた数多くの本を見ることができる。さらに彼の仕事を特徴づけているのが、その多くを日本書の翻訳出版が占めているということである。彼自身が選書からデザインまでを手がけたシリーズは、台湾の若きデザイナーや、アートやデザインに関心をもつ人々の人気を集め、こうした彼のデザイナーを超える活動が、王志弘の名をより知らしめている。 

 

日本の本を台湾に紹介

王さんは、日本の書籍の翻訳出版のデザインを数多く手がけていらっしゃいますね。

  はい。実は、僕がブックデザインを手がけた本のうち3分の2は、僕自身が日本の書籍からセレクトし、台湾の出版社に紹介したものです。2008年、2012年にそれぞれ出版社と提携して「INSIGHT」「SOURCE」という選書シリーズをつくり、本のセレクトからデザインまでを手がけています。アートとデザインの分野を中心に、これまで横尾忠則、荒木経惟、草間彌生、原研哉、佐藤可士和、佐藤卓などの著作を台湾に紹介してきました。

本はどのように探してくるんですか?

  僕は日本語はまったく読めないのですが、ほとんどの場合は「人」から探します。良いなと思ったアーティストやデザイナーがいたら、台湾に紹介するにふさわしい出版物をその人が過去に出したことがあるかを探していくのです。本を選んだら台湾の出版社に伝え、版権交渉など必要な手続きを行ってもらいます。

「INSIGHT」と「SOURCE」はどう違うのでしょうか。

  2008年、最初に立ち上げた選書シリーズが「INSIGHT」でした。ただ、僕がセレクトした本が必ずしもマーケットの需要に則したものとは限りません。僕が良いと思った本でも、売れないこともある。それで「INSIGHT」シリーズは7冊で打ち切りになってしまったのですが、その後、別の出版社が賛同してくれて、「SOURCE」シリーズが始まりました。こちらはもう10冊以上、出版しています。たとえば中平卓馬・篠山紀信の『決闘写真論』(『決鬥寫真論 篠山紀信 中平卓馬』)。この本は、内容が難しすぎるということで「INSIGHT」では企画が通らなかったものを、「SOURCE」で出版することができたというものです。

なぜ日本の本を台湾で紹介しようと思ったのですか。

  まず、デザインやアートの分野において、僕が日本の状況に比較的詳しいということがあります。また、日本語が読めないといっても、同じ漢字圏であるため、英語など他の外国語に比べると内容を理解しやすく、判断を下しやすいということがあります。

王さんが手がけた翻訳書は、日本の原書と比べると、まったく異なるデザインの本として生まれ変わっています。いくつかの作品について、どのようにデザインを考えていったのか教えていただけますか。

  まず、いま話に出た『決闘写真論』。タイトルの「決闘」という言葉から、僕の脳裏には「◯◯武闘会」のような横断幕が掲げられた会場で、中平卓馬と篠山紀信の2人が対峙し、戦闘に臨む場面が浮かび上がりました。その絵をそのままビジュアルとして構成するのではなく、2人の名前の文字そのものをキャラクターに見立てて決闘シーンのように配置した空間構成にしています。中平卓馬の写真は、ある意味いたって普通であることが特徴なので、ブックデザインにおいても飾り立てたものにしてはいけないという思いもありました。著者名をこんなふうに配置する構図に違和感を持つ人もいるかもしれませんが、文字自体がその人を表すビジュアルなのだととらえています。