• 霧室の2人。
    左の女性が黃瑞怡(ルイイ)さん。
    右の男性が彭禹瑞(レイヨ)さん。
    彼らの感性の高さがうかがえる、
    美しいオフィス。

霧室

Mistroom | ウーシー

低予算でも創意工夫でセールスポイントをつくる

今回見せていただいた本は、全部とても手間も時間もかかっているように思います。本だったら内容や原案を読んで、内容からピックアップしてとか、ビスケットを焼いたり、刺繍をしたり。台湾の場合、出版社の人はどれくらいの時間をくれるんですか?

レイヨ 正式にお話をもらってから、一回目のプレゼンをするまでが大体7〜10日の作業日数ですね。その間にラフスケッチや自分たちが提案したいサンプルづくりをします。

ルイイ プレゼンのときに納期も一緒に説明します。待ってもらえるかどうかで、提案した方向性で続けられるかも決まってきます。例えば、刺繍のような手作業に必要な制作日数は、5日間ほどみています。霧室のやり方に理解のある寛大なクライアントに恵まれているのは幸運だと思います。

思ったより短い期間ですね。

レイヨ 僕たちの提案がそのまま通ればいいんですが、いいと言ってもらえたデザイン案でも、予算面や納期がネックになることもあります。例えば印刷コストを抑え、その分を手作業でカバーできないか検討します。その代替案が通れば、出版社側からも人手を出してもらって僕たちがやり方を教えたりして一緒に作業をします。

自分たちの手作業を提供するってすごいですよね。刺繍が外注できない、じゃあ私がやりますってデザイナーはなかなかいないと思う。できる人でも時間的にも余裕がないですし。

ルイイ そうですか? ビスケットを使った『漢字的魅力』も、出版社に余裕がなかったので、紙や印刷面ではお金をかけていません。低予算でも、どう本に質感を持たせ、セールスポイントを増やせるかを考えました。創意工夫次第だと思います。

レイヨ そうですね。人文系の本や文芸書は、どう露出度をあげるかを考えます。ビジネス書にあえて手づくり感を残したりして、温もりをプラスすることもあります。既存のイメージややり方に囚われないようバランスをとっています。

今だいたい月に何冊くらい手がけているんですか?

レイヨ 平均して月に10〜15冊ほどやっていますが、私たちはブックデザインだけでなく、CDジャケットからカタログ、パンフレット、ポスターなども手がけています。今日は、僕たちがとりわけ手間をかけ、特に気に入っている本を紹介しましたが、全部が全部こんなに凝った仕事をしているわけではないんですよ。

余談になりますが、iPhoneのカバーにミナ ペルホネンの刺繍が着いていますね。皆川明さんが好きなんですか?

レイヨ はい。これは日本で買ってきたハギレを使って、自分で加工したんです。日本へ遊びに行ったとき、東京と京都両方の直営店に行ったくらい、皆川さんが好きです。作品集も持っています。自分の信念や実現したいことに向かって全身全霊をかけて打ち込んでいるところを、本当に尊敬しています。

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取材の間、霧室の二人からの本の説明を聞いていただけなのだが、まるでその本を読んだかのような充実感が感じられた。それだけブックデザインに本の内容が凝縮して詰まっているのである。

この凝縮感は、霧室の二人や加工工場の人々など、人の手から生まれることによるところが大きいだろう。手による作業はその人の手癖を残し、つくり手の思いがより濃く受け手に伝わる。責任を持って本の内容を伝えたい、取材からはそんな熱意が感じられた。

写真だけでも、デザインの素晴らしさはわかるだろうが、糸の危うい感じや、光の使い方など、やはり実際に手にとらないとわからない部分も多い。ぜひ日本の読者も実物を手にして、その味わいを感じてほしい。


霧室|Mistroom

黄瑞怡(ファン・ルイイ):1984年生まれ。2005年、景文科技大学視覚伝達デザイン科卒業。
彭禹瑞(ペン・ユゥルイ/ニックネーム:レイヨ):1983年生まれ。2005年、崑山科技大学視覚伝達デザイン科卒業。
二人は同じデザイン会社勤務を経て、2010年、霧室を設立。ブックデザインの他、演劇、CD、パッケージデザインなども手がける。台湾のブックデザイン賞「金蝶獎」の栄誉賞、雑誌「Shopping Design」のデザイン賞他、受賞歴多数。樹火記念紙博物館や剝皮寮、誠品書店などで書籍デザイン展示に参加。