• 『拉丁美洲:被切開的血管』
    著:エドゥアルド ガレアーノ 訳:王玟 
    邦題: 「収奪された大地――ラテンアメリカ500年」
    南方家園 2011
    210×149×18 mm

  • 『我們都不完美』 (We Are Imperfect)
    CD 演奏:生命樹(TREE OF LIFE) 
    亞神音樂娯樂 2014
    145×20×10 mm

霧室

Mistroom | ウーシー

次の本は、またかなりイメージの違う荒々しいものですね。カバーが破れているんですか?

ルイイ これはエドゥアルド ガレアーノの『拉丁美洲:被切開的血管』(収奪された大地 ラテンアメリカ五百年)という本です。タイトルは帯に入れてあります。これまで長い間略奪されてきたラテンアメリカの歴史を描いた作品で、破壊や引き裂かれた感じを出すため、カバーを人の手で削っています。出版社の人たちと私たちの計6人で2000冊つくりました。

紙のフチが引きちぎられたり、折り曲がった部分が擦れて紙の地色が見えているのはどれも手作業で削りとったからなんですね。

ルイイ ええ、まずカバーの紙を円弧のように大まかに切り落とし、カッターを使って一冊ずつ削りとっていきました。手作業でないと完成しないデザインは初めてでした。

レイヨ 男性のほうが力があるのでうまくつくれると思っていたのですが、女性のほうがむしろうまかったですね。僕が検品をしてやり直しをお願いしたものもあります。毎日徹夜作業で本当に大変な作業でした。再版はさすがに加工工場にお願いすることにし、僕が作業員につくり方を指導しに行きました。作業を見ていた工場のオーナーが「簡単じゃないか。俺なら一冊30秒でできるよ」と言うので、納期は厳守するよう念押しをして、オーナーが後悔する前に、編集者と慌てて帰りました。ちゃんと期限通りに納品をしてくれましたが、その次、再々版のお願いに行ったときは「もう無理です」と断られてしまいました。

破損品に見えてしまって、書店から返品される危険性がありそうですが、出版社のほうではその点、不安ではなかったのでしょうか?

レイヨ 出版社の編集者もその点は心配していました。「これは特殊な装幀です」という但し書きを付けています。実際に何件かのクレームがありましたが、全体のごく一部です。

ルイイ より多くの方に手に取って読んでもらうことが重要なので、インパクトのあるデザインにしてよかったと思います。重いテーマの本なので2000冊は難しいだろうと不安でしたが、発行から1〜2か月で完売しました。

次は『拉丁美洲:被切開的血管』の技法の応用になりますが、数年後に生命樹(Tree of Life)というバンドのファーストアルバム『我們都不完美』(We Are Imperfect)のCDジャケットデザインを手がけました。地の部分はコンクリートの壁をイメージしています。私は、道路の片隅から生えている草の逞しい生命力はすごいといつも思っていて、そこからアイデアを膨らませ「コンクリートの割れ目から芽を出す小さな草」をコンセプトにデザインを起こしました。

レイヨ ちょっと変わっているところは、中のページを、ミシン目に沿って買った人が手で切る方法になっています。自分の見たいページを破いていく……。タイトルがImperfectなので、完成形でなくてもいいと思いました。

紙のラフな加工はどうされてるんですか?

ルイイ 岩のような質感を出すために、板紙に凹凸の版を違う圧で2回プレスしています。型の向きをプレスするごとに変えています。隙間の部分は、先ほどの本と同じように手作業で削っています。2000冊私たちのスタジオでつくりました。手づくりなので一つとして同じものはないですね。

次の本は田園城市から出ている本なのですね。

レイヨ 郭靜瑤の『女神打排球』(女神がバレーボールを打つ)という詩集で、私たちがスタジオを立ち上げたばかりの頃に手がけた作品です。自費出版の仕事を受けたケースはこれが初めてでしたので、とても思い出深い一冊なんです。最初は、作家から連絡が来て、メールなどのやりとりをする友達という感じでした。彼女の好きな音楽、映画、食べ物、それから恋愛観などをうかがって、それで仲良くなった頃に、ブックデザインの依頼が来たんです。

ルイイ 郭靜瑤は当時40歳でしたが、どうも恋愛経験がないようでした。純粋な女性の幻想を澄んだ湖に例え、青いさざ波が立つような気持ちや、太陽が水面に反射してキラキラと輝く光を、ブックデザインに落とし込みました。ページが袋とじになっていて湖を折り畳むように、内側に薄い水色を刷っています。