• 『顛覆思想的心理大師:耶穌超凡的智慧』
    著者:アウグスト・クリ 訳:劉徳松 
    邦題: 「人間イエスを科学する――キリストの心理分析」
    財團法人聖保祿孝女會附設上智文化事業 2012 
    210×150×16 mm

  • 『顛覆思想的心理大師:耶穌超凡的智慧』
    の表紙撮影で使用した
    1966年刊の『エルサレム聖書』。
    200頁の紙を彼ら自身が手で切り抜いた

  • 『光陰 中國人的節氣』
    著:申賦漁 
    龍圖騰文化 2012
    200×170×15 mm 

霧室

Mistroom | ウーシー

自分でDIY的につくる本の仕組みなんですね。斬新なアイデアですね。

ルイイ 原著は中国本土で出された本で、これは台湾向けのバージョンになります。『光陰  中國人的節氣』のタイトルにある光陰とは「年月」や「時間」の意味で、節気は春夏秋冬の4つの季節をさらに6つに分けた「二十四節気」を指しています。これはその節気の移ろいや時の流れを紹介している本なんです。昔は時計やカレンダーといったものがなく、日時計で時を計っていました。木々の日陰、影の長短によって、立春や夏至といった節切りをしていたそうです。

この表紙のイラストレーションは描き下ろしですか?

レイヨ これは知り合いのイラストレーターに、私たちのデザインや発想を伝えて、それをもとに描き下ろしてもらいました。

ルイイ 挿絵はすべて中国の農家の人たちが描いたものです。正式な美術教育を受けたことのない彼らの絵は、素朴で、色使いもとても鮮やかです。中国版は少しクールなデザインなのですが、私たちはその明るい色調や素朴さ、暖かい雰囲気を、カバーデザインにも反映したいと思いました。

内容は中国版と同じですが、フォーマットやレイアウトを変えました。それぞれの節気を紹介している扉ページを見てもらうと——例えば「大暑」のページには全面に斜線のストライプが敷かれていますが、この斜線の角度は120度で、これは大暑の日の地球に対する太陽の通り道(黄道)の角度を表します(二十四節気では春分が0度となる)。「夏至」だと90度なので、「夏至」のページには垂直のストライプを入れています。

レイヨ ふだん生活を送る中で、今日が春で明日が夏というように、僕たちははっきりと季節の変わり目を感じているわけではありません。季節の移ろいというのは、緩やかに移行していくものなので、このようなグラデーションで春夏秋冬を表現しました。小口部分の着色は、春から始まり、夏、秋、冬、そしてまた春へと戻っていくようになっていて、本をめくれば、四季の風も感じてもらえると思います。

 

工場でできないことは自分たちの手で

レイヨ 次は心理学者アウグスト・クリの『顛覆思想的心理大師:耶穌超凡的智慧』(人間イエスを科学する——キリストの心理分析)という本です。この本は心理学の角度から、イエス・キリストという1人の人間の行いや導きを分析した本です。イエス・キリストは、直接的な言葉で何かを伝えるのではなく、比喩表現をうまく使いこなす人でした。イエス・キリストは神の子である以前に、優れた心の専門家だったわけです。

ルイイ この本を読み終え、私たちが一番共感した箇所がこの文章です。「命の学校の中で、最も大きな成功とはうまく成し遂げた見かけの成果ではなく、内なる世界をいかに征服できたかにあります。この長くて険しい旅路は、外界にはなく、あなた自身の中にある道に沿って続いています」

レイヨ 「心の深いところ」や「内なる道」をどうデザインするかが、一番の悩みどころでした。最初はパソコン上で、ベクターで演算しながら、渦巻く様な線を引いたりしていましたが、どこか深みや現実味に欠けていました。この本はカトリック系の出版社から出ているので、実物の聖書に穴をあけたいと、シスターに打診したところ、古い『エルサレム聖書』をくださったんです。断られることを覚悟していたので、快諾してくれたときは嬉しかったですね。

しかもこんなに古い本を?

レイヨ そうですね。1966年のものだと聞いています。まずパソコンで線を描き、型紙をつくりました。一枚一枚手で型紙を起こし、その型をまた聖書に重ね、線をなぞり、切り抜いていきました。

切り抜いたページは何枚あるんですか?

ルイイ 200枚です。

レイヨ その切り抜いた聖書を撮影したのがこの本の表紙です。

切り抜きの作業は誰がやったんですか?

ルイイ 私たち二人です。

レイヨ それから本を開いたときにできるカーブを利用し、旅路の絵を3見開き、つまり6ページ入れています。縦にしてページをめくっていけば、暗かった長い道のりが、視界の開ける場所へとつながっていきます。