• 『慢享 山水田園詩──偷得浮生半日閒』
    著:栞涵 写真:濱田英明、Lazack、大野あかね 
    夏日出版/遠足文化 2012
    211×150×15 mm

  • 『慢享 山水田園詩
    ──偷得浮生半日閒』

霧室

Mistroom | ウーシー

内容を立体的に表現

ルイイ 私たちのデザインのスタイルは、統一感を持たせたり、方向性を絞ってはいません。できるだけいろいろなアプローチや表現法を試みています。でも、読者の皆さんが書店でカバーを目にしたときに、これは霧室が手がけた本かもしれないと見分けることができるのは何故だろうと私なりに考えていました。ひとつ言えるのは、私たちはどの本においても、自分たちが一番感動した箇所——そのコアなイメージを大切にしているということです。

レイヨ 僕たちはただ本の外観、カバーという紙をデザインしているわけではなく、本の内容を一層豊かなものに、立体的にさせるにはどうしたらいいか、常にその可能性を探っています。

具体的に作品を例に見せてもらってもいいですか。

レイヨ 例えば『慢享 山水田園詩』。この本はまず扉と折り込みページの組み合わせを見ていただきたいです。

真っ白な扉ページに、大小10個くらい丸い穴があけられていて、それをめくると、今度は木立の枝葉から無数の光輪が漏れる写真が現れる。写真は折り込みで開く仕組みになっている。

レイヨ 扉の紙の穴を通って光が木立の写真に照らし出すようになっています。

なるほど。扉の紙の角度が変わると、穴からの光の入り具合が変わって、まるで木漏れ日が揺れているみたいですね。木立の写真の光輪と、木漏れ日のような実際の光が重なり合う。これはきれいですね。

レイヨ ありがとうございます。

これはいつつくられたんですか?

ルイイ 2012年です。田園生活を謳った昔の詩集ですが、古典や詩を読むことの少なくなったいまの人々に、どう紹介できるか、出版社と一緒に考えました。『慢享  山水田園詩』の「慢享」とは「ゆっくりと享受する、楽しむ」という意味で、サブタイトルの「偷得浮生半日閒」(憂き世の僅かな余暇にうたう心)のように、仕事の忙しさや緊張している心をいかに解きほぐすかを知ることができる本です。

フォトディレクションもされているんですか?

レイヨ それは日本人の写真家、濱田英明さんにお願いしました。フォトグラファーは合計で3名います。

カバーだけでなく本文もデザインしているんですか?

レイヨ この『慢享 山水田園詩』に関しては、すべて僕たちが手がけました。でも、たいていオファーが来るときにはもう中のフォーマットやレイアウトがすでに出来上がっていてカバーデザインだけ手がけることも多いですね。

ルイイ 田園詩においては、いかに調和を図りながら自分たちが自然に近づけるか、ということが重要だと思います。この詩集は、「リラックスして自然を感じること」をコンセプトにデザインを考えていきました。例えば私は午後の陽だまりの暖かさや木漏れ日が好きで、斑点模様の光や木々の陰影を見ると気持ちが和み、とても癒されます。

いい本ですね。

レイヨ 次の本『光陰 中國人的節氣』は季節の移ろいをカバーからもわかるようにしてみました。

背からぴょこっと紙の木が飛び出しているんですね。背を上にして本を開いて、置いてみると……。ここからどうなっていくんですか?

ルイイ いま室内で見てもわからないのですが、例えば1日外に置いておいたとすると、それが日時計のように影をつくっていきます。

ああ。なるほど。実際に日時計として使うものではないにしても、この木が日時計の象徴になってるということなんですね。カバーの色が右上から緑、赤、水色、赤というように変わっているのは、これは季節の色ということですか?

ルイイ はい。そうです。小口も季節の色をイメージしてグラデーションにしています。

美しいですね。この木の形の紙は、背から飛び出る仕組みで設計されているのですか?

ルイイ いいえ、カバーのソデに木の形をミシン目で抜いてありますので、それを買った人が自分で切り抜いて、背に差してもらうようになっています。