• 台南にある藝陣館の
    オープニング記念リーフレット。
    2014

  • 台北の北投温泉博物館で開催の
    「台湾月琴民謡祭」のリーフレット。
    2012

何佳興

Ho Chia-Hsing | ホー・ジァシン

台湾文化の持つ底力を伝える

  次は台湾の民間信仰と宗教文化をテーマにした博物館で、台南にある藝陣館のオープン記念につくったリーフレットをお見せしましょう。光栄なことにポスターは東京TDC(タイプディレクターズクラブ)に入選しました。

神様の顔がどーんと。淡い金地に、ミントブルーと赤と紫。すごいコントラストですね。そしてまた、右上に文字がギュウギュウに詰まっていてインパクトがありますね。

  これは台湾の廟で祭られている神様たちです。日本の仏像は静かで安らかな気持ちにさせてくれますが、台湾の神像はどちらかというとワイルド。僕は日本の仏教もとても好きなので、普段から日本の仏教関係の書籍を集めていて、そこから仏像を描く線の使い方などの勉強をしています。このリーフレットをつくるとき、日本の仏像の粛然とした静けさを、台湾の図像表現にも置き換えられないか、なおかつ台湾の神様のワイルドな風貌や艶やかな色合いも失うことのないようにできないかを考えてたんです。そこで、カラフルな配色で台湾らしさを保ち、線は日本の工筆画の緻密な技法を参考にしてデザインしました。

印刷も贅沢ですね。

  ドイツ製のコート紙でA01番と呼んでいる紙なんですけど、繊細で精巧につくられた紙で、特色印刷との相性もよく、インキをのせるとメタリックな光沢感と紙の細かい模様が浮かび上がってきます。インキは6色で、ネオンカラーを使っています。いろいろな紙で試し刷りをした結果、いまのところ台湾で入手できる紙の中でA01番が一番この蛍光色と合っていると思い、使いました。

文字組もすごくギリギリまで文字を持ってきてますね。これは何か意味があるんですか?

何  文字をギリギリにレイアウトにしたのは、石碑のように見せたかったからです。タイトルの部分は詩籤(台湾のおみくじに記されている漢詩)をのせていて、その上に絵を重ねています。

文字組の構成も、台湾らしい表現を提案できないかといろいろな文物を参照にしています。台湾の民俗芸能や民間の信仰を、いまのデザインに昇華させる方法をいつも模索しているんです。日本のものもよく参考にしていますよ。相撲の番付や広告などで使われる書体も勉強になります。

こちらのリーフレットも派手な色使いですね。

  これは「台湾月琴民謡祭」のためにつくったリーフレットです。月琴とは、台湾の代表的な民族楽器の一つで、例えるなら沖縄の三線のようなものですね。台北の北投温泉博物館で行われるこの民謡祭のデザインをずっと担当しています。年に1度、ベテランから若手まで、全国の月琴奏者が一堂に会する一大イベントです。シリーズなので、同じスタイルや雰囲気にしていますが、毎年違うグラフィックを展開しています。

民謡と聞くと老人っぽい感じがしますが、このデザインは黄、赤、青、緑、銀などの色使いが強烈ですごく刺激的ですね。若者に向けたリーフレットなんですか?

  そういう意図もありますが、新旧を問わず台湾が持っている底力というのか、エネルギッシュさを、デザインによってもっと引き出せたらと思っています。般若心経もそうなんですが、民謡は年寄りが好む時代遅れの音楽だという印象を持っている人が少なくありません。でも世代を超えて歌い継がれてきた素敵な歌も中にはたくさんありますから、時が変わっても魅力を失わない伝統のかたちを、僕たちが提案していかないといけないと思っています。

台湾は面白い国ですよね。日本よりもゆっくりしているけど、みんなすごく元気な感じがします。

  わかります。僕もデザインを通して、台湾の活力やバイタリティを伝えていきたいです。台湾の民俗文化をどうデザインに取り込んでいけるか、今後も伝統を根幹に据えた、新しいデザインを提案していきたいですね。

他に今後やってみたいこととか、将来の目標などあれば教えてください。

  文字組に関しては、絶えず学び続けていく必要があります。満足は永遠にしないだろうし、時代とともに自分も進歩していかなないといけない。字を書くことが好きなので、書道の創作はずっと続けています。書というのは、地道に研鑽を積まないと鈍ってきますから。

書は僕の創作の源にもなっています。もっと経験を積んで、50歳、60歳となったときに、自分がどういう字を書けるようになっているか楽しみです。字を書くところをお見せしましょう。