• 『沖繩札記』
    著:大江健三郎 訳:陳言 
    原題: 「沖縄ノート」 
    聯經出版 2009
    210×150×15 mm 


    『優美的安娜貝爾・李 寒徹顫慄早逝去』
    著:大江健三郎 訳:許金龍 
    原題: 「臈たしアナベル・リイ 
       総毛立ちつ身まかりつ」
    (文庫版で「美しいアナベル・リイ」へ改題)
    聯經出版 2009
    210×150×15 mm 

  • 『荒木経惟 寫真=愛:直到生命盡頭, 我依然相信寫真』
    著:荒木経惟 訳:黃亞紀 
    原題: 「荒木経惟 実をいうと私は、写真を信じています」 
    原點出版 2012
    210×150×23 mm

何佳興

Ho Chia-Hsing | ホー・ジァシン

文字を解体し、再構成する

  台湾では日本の本を翻訳した本がたくさんあるんですが、僕も大江健三郎や荒木経惟の本を手がけています。大江健三郎の『沖繩札記』(沖縄ノート)は、本文からカバーまで全部やりました。カバーのイラストも自分で描きました。

タイトルは銀の箔押しですか? すごく控えめな色合いの銀ですね。

何  少し軽めにしたかったんです。字も変えてるんですよ。

あっ、「沖縄」の「縄」が、たなびいたような、左側に字画が流れてる!

  いま見返してみると、文字の扱い方がまだまだ未熟ですけどね(笑)

『優美的安娜貝爾・李 寒徹顫慄早逝去』(臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ)は同時に出たんですか?

  そうです。発行日も一緒です。大江さんの訪台記念出版で2冊同時に出すということは、出版社から話が来たときにはすでに決まっていました。『優美的安娜貝爾・李 寒徹顫慄早逝去』の表紙イラストは依頼が来る前に描いたもので、このイラストを使ってほしいと出版社から要望があったんです。『沖繩札記』のほうはそれに合わせたかたちで、描き下ろしました。

僕の場合はイラストも含め、本文の組み方からカバーまで一冊まるごと手がけることがほとんどです。カバーデザインだけではなく、本全体の一体感を大切にしています。

荒木経惟の『寫真=愛』(原題:荒木経惟  実をいうと私は、写真を信じています)。荒木さんが母親や妻など女性たちとの濃密な関係や、自身の人生や愛について語っている本です。その雰囲気がシンプルかつストレートに伝わるよう、代表的な写真を一枚選び表紙に使っています。でも、デザインのポイントはむしろタイトルのほうにあります。文字の重量感をもっと際立たせたいと思ったので、荒木さんの手書き文字をもとに「写真=愛」という字をつくりました。「写真」の2文字はそのまま。「=」(イコール)の2本線は荒木さんの手書きの文字から線の部分を抜いて組み合わせています。「愛」は別の写真集から拾ってきたものですが、そのまま移したわけではなく、「愛人」という2文字を拾ってきて、「愛」と「人」の文字を解体し、それをまた「愛」という字に再構成しています。

「愛」という字の下部の「夂」(ふゆがしら)が「人」と組み合わさって、ずーっと伸びている感じですね。

  中国の「篆刻」の技法と少し似ているのですが、字画や点線を自由につなぎ合わせることによって、字の持つ「表情」や字の放つ「気」がより立体的になります。そうすることで、文字という図像の中からも、作者の伝えたい何かを感じとることができるのです。

文字の組み方に、かなり力を入れたので、大江さんの本を手がけたとき(2009年)よりも、『寫真=愛』のとき(2012年)のほうが、ちょっとは文字の扱いもうまくなってると思うんですけど(笑)。帯のタイポグラフィも、そのときの自分ができるすべてを出し切りました。軽いタッチの文体に合わせて、本文のフォントや大きさ、並べ方を決めていきました。一見軽く見えてもさまざまな想いが込められているので、手に持ったときに少しでもその重みが伝わるよう、厚めの紙を選んでいます。荒木さんの余韻や世界観を、ブックデザインで表せないか、いろいろな工夫をしてみました。