• 『二色心經 HEART SUTRA twice』
    TIMONIUM LAKE 2011
    177×149×4 mm 
    「TIMONIUM LAKE」は何佳興の
    事務所名兼自主レーベル名

何佳興

Ho Chia-Hsing | ホー・ジァシン

『二色心經 HEART SUTRA twice』も般若心経の本なんですか?

  ええ。この本は僕が自主的にやっているレーベルでつくった本です。出版社の縛りがない分、実験的な試みもしやすい。題材探しからすべて自分で手がけているので、個人の創作や作品に近いですね。この中にも般若心経に関係したものがあります。

般若心経の「眼耳鼻舌身意」(人間の感覚器官と意識による認識のこと。般若心経はそれらの認識に実体がないと説く)を、僕なりの解釈を加えた本で、目や耳など各項目ごとに詩と絵を入れています。なぜこれが目で、なぜ鼻がこういう表現になるのかと聞かれても説明が難しいんですが、イラストレーションが重なっていく感じは、般若心経に対する僕の心象風景なんだと思います。

この『二色心經』にあるような幾何学模様や直線、記号が重なっているイラストレーションも何さんが描いているんですか?

  はい。この本は僕が35歳の時につくって、今から5年くらい前になりますが、当時こうした感じの絵をよく描いていたんです。この本自体は薄くて小さい本ですが、デザインに対する考えを凝縮した一冊なので、30代前半の集大成とも言えるかな。『二色心』というタイトルの「二色」に掛けて二色刷りにしました。袋とじの中に色の印刷が隠れています。

仏教の「二色」というのは、人間を人間たらしめるもの、人間のあり方と事象の成り立ちを二元論で解釈している言葉なんです。例えば、精神(自覚、自己意識、意識の活動)と外界(五塵、五境)との関係がそうです。なので、内の色(眼耳鼻舌身意)と外の色があると。

あと、経文の文字が45度傾いて組まれているのは、数珠を数えるように文字を追って読むためです。文字を数珠玉に見立て、一文字一玉といった具合に、念仏を唱えていくんですよ。

般若心経に関する本はざっとこんな感じです。他の作品でも、般若心経の英文を抜粋してデコレーション的に取り入れることもありますね。現代的なデザインにアジアの伝統文化との融合させるように心がけています。自分たちが受け継いできたものとか、日常生活に潜む民俗的なものをデザインとして形にしたい。般若心経は仏教におけるバイブルでもあるけれど、特別な読み物というよりは、日々読まれている庶民的なものだと僕は思っています。