• 『夜未央』
    著:F. スコット・フィッツジェラルド
    訳:劉霽 
    邦題: 「夜はやさし」
    一人出版社 2015
    214×134×30 mm

小子

Godkidlla | シャオツー

作家たちが本を贈り合うかのように

次に、ブックデザインのお仕事についてお話いただけますか?

小子 ではまず最初に、F・スコット・フィッツジェラルドの『夜はやさし』(『夜未央』)から。これは精神科医が富豪の娘に恋をする物語です。患者である彼女を治療する過程で主人公の心は徐々に奪われていくのですが、彼の寄り添いも空しく、娘は快復すると彼のもとを去っていきます。彼女は一度だけ、彼に手紙を送ります。そこには「新緑のまぶしい、あの青々とした丘で待っています」というようなことが書いてあった。

それを読んで僕は、彼女の心情や、彼らの揺れ動く恋模様から、「女心は海のように深い」「女は水でできている」というイメージを持ちました。そこで表紙デザインは、水が流れるような曲線、丘の稜線と女性の横顔のラインといった要素を掛け合わせたイラストレーションにしました。この1本1本の線はパソコン上で描いています。

表紙は何色刷りなんですか?

小子 同じ特色の青を2回刷った上に、女性の横顔の白いラインに合わせてUVニス加工をし、凹凸を出しています。

同じ青を2回。とても繊細な印刷ですね。そしてこの本は、カバーのない上製本で、表紙が角丸になっている。日本ではこれをやるのは大変なのですが……。

小子 台湾でも大変です。本というのは、小さなところを加工したり、パッと見てもすぐにはわからないような部分に何かしらの効果を出すために、とてもお金がかかったりします。

隅々までこだわってデザインされているんですね。背に入っている題字も、もしかして……。

小子 自分でつくりました。

やはりそうですか。アルファベットを組み合わせてつくっているのですか?

小子 一見そのように見えるかもしれませんが、すべて自分で線を引きました。部分部分では欧文のスクリプト体も参考にしていますが、このデザイン自体は僕のオリジナルタイプフェイスです。もう1冊、アーネスト・ヘミングウェイの『日はまた昇る』(『太陽依舊升起』)の題字もオリジナル。作家の性格が違うので、フィッツジェラルドの『夜はやさし』はロマンティックなスクリプト体のイメージ、ヘミングウェイは硬派なので角張った文字にしています。

先ほど「組み合わせましたか?」と質問したのは、既存書体を単純に組み合わせたという意味ではなく、モチーフとして欧文の要素を漢字の中に取り入れるということをなさっているのかと思ったんです。

小子 文字のデザインには、とてもこだわっています。文字をどうするかによって、引き出される感情は微妙に変わってくる。書体は書き手の気持ちにも影響を及ぼします。たとえば欧文が本来持っている個性、自然に醸し出す雰囲気や組んだ時のイメージを、中国語の漢字でそのまま再現するのはとても難しいと思いますし、逆もまた然り。漢字の持つ豊かな表情を、シンプルな欧文で再現するのも困難です。両方の感覚を融合させて、欲しい文字をデザインすることは、僕にとってすごく面白い挑戦なのです。

不思議でならないのは、台湾では表紙に入れる英語タイトルがとても大きいのに対し、中国語がごく小さく入っていたりする。しかし本の内容はすべて漢字の繁体字で書かれているのに、欧文をバーンと大きく持ってくるデザインがなぜか多い。単に僕が負けず嫌いなのかもしれませんが、中国語を母語とするデザイナーとして、英語で表現できることをいかに中国語の漢字でも可能にしてみせるか、この数年いろいろと試しているところなんです。