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T5 台湾書籍設計最前線 | 書籍版について

『T5──台湾書籍設計最前線』

B5変型 168頁 オールカラー。
2015年11月下旬発売。

東京藝術大学出版会
〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
TEL:050-5525-2026 FAX:03-5685-7760
http://www.geidai.ac.jp/information/geidai_press

ISDNコード
9784904049471
1920072025000
C0072

目次
002 ビジュアルページ(5組のデザイナーによる自作の再構成)
013 はじめに
016 聶永真(アーロン・ニエ)
040 王志弘
064 小子
088 霧室
112 何佳興

138 日星鑄字行
146 田園城市
154 雄獅美術
158 華麗島の歳月──美本は臺北から
文:李志銘(文学者西川満についてのエッセイ)
166 あとがき

 

デザイン監修:松下計
表紙デザイン:林唯哲
本文ページデザイン:小池俊起


取材後記

台湾のブックデザインの奔放さは羨ましい。

日本では長引く出版不況のために、書店に流通する書籍は、コストのかかる印刷や製本は避けられて、販売や流通での扱いやすさが優先されて、実験的なデザインを試みる機会が非常に少なくなってきている。

しかし今回の取材を通して見えてきたのは、日本より製造コストが低く、取次や書店など流通から来る制約がゆるいから、台湾では若い冒険心にあふれるデザイナーが自由闊達なデザインを実現できる、という単純な結論ではない。それもひとつにはあるが、それだけはない。実際、取材した多くの台湾のデザイナーや編集者が、台湾も出版事情は厳しいと語っていた。

むしろ本書の取材を重ねるなかで浮かび上がってきたのは、デザイナーたちが厳しい制約があっても可能な限り時間をかけて本の内容と向き合い、それを製造工程に深く反映させようとする慎重で真摯な姿勢であった。

さらに注目すべきは、聶永真(アーロン・ニエ)や何佳興のようにまだ無名の写真家の作品集を自分でプロデュースしたり、王志弘のように自主企画で継続的に選書シリーズを出版し、「商品としての本づくり」でなく「文化としての本づくり」を盛り上げていこうとする、発信者としてのアクティブな姿である。

もうひとつ取材から受けた印象的なことは、活版印刷や書道、篆刻などが原点になっているデザイナーがいるなど、新しいものばかりを見つめているのでなく、古きものへ開かれた目を持つことで、それぞれがデザインを通して台湾のアイデンティティを探している姿勢を持っていたことである。

「日本のデザインから多くを学んだ」と取材したすべての台湾のデザイナーたちが異口同音に語っていた。実際大手書店の美術デザインコーナーにも、彼らの書棚にも、日本で出版されたデザイン書がたくさん並んでいた。

しかしいま熱気に満ちた台湾デザインの状況をみると、今度は日本が台湾から学ばないといけない、と強く感じた。若手が次々と頭角を現した1950年代後半から1960年半ばの日本のグラフィックデザインの活気──日本が忘れてかけてきたデザインの青春が台湾にあるようなのだ。

本は人と人をつなぐ。デザインもまた人と人をつなぐ。台湾のブックデザインの最前線を紹介した「T5」プロジェクトが、日本と台湾の文化交流をさらに深める役割を果たすことを願ってやまない。

藤崎圭一郎(編集担当、東京藝術大学デザイン科准教授)