• 『tokyo boy alone』
    著:森栄喜 
    自轉星球 2011 写真集 
    日本販売元:ナナロク社
    240×180×26 mm

  • 『tokyo boy alone』を開いて、
    インタビューにこたえるアーロンさん

聶永真

Aaron Nieh | アーロン・ニエ

写真家の本を自主的にプロデュース

アーロン 僕の作品集を出している出版社は、もっとコンスタントに作品集を発表し続けたいと言うんですが無理がありますよね。いいものをつくるには時間が必要ですから。なので、最初の作品集と2作目の間の5年間は、自分で企画した本をつくったんです。森栄喜とNo.223の作品集と2冊です。当時、彼らはほとんど無名で、大概の出版社は、採算がとりにくい写真集はあまり出したがらない。だから僕の影響力で、多少なりとも若手の作品に注目してもらえると良いなと。

まずは、森栄喜さんの『tokyo boy alone』でしたね。森さんはのちに別の写真集で木村伊兵衛写真賞を獲りましたね。

アーロン 2011年です。たまたまフリッカーで彼の写真を見て、そこから仲良くなったんです。その後彼の写真展のフライヤーのデザインを頼まれたので、台湾の出版社の社長と一緒に東京まで展示を見に行きました。見終わったとき、ぜひ僕たちに本の制作をやらせてほしいと伝えて実現したのが『tokyo boy alone』。彼の初の写真集になりました。

推薦文が小説家の吉本ばななさんと吉田修一さんなんですよね。有名作家と無名の写真家の組み合わせ。もともと知り合いだったんですか?

アーロン 知り合いではありませんでした。写真家や写真評論家ではなく、僕たちが本当に尊敬する作家に推薦してもらいたかったので、吉本ばななさんと吉田修一さんに依頼の手紙を出したら快諾してくれました。

どれくらい売れたんですか?

アーロン 写真集は一般的に台湾で3000冊売れればヒットといえます。コストが掛かる分、売値も高くなり、出版社もあまりつくりたがらないのが現状です。でも出版社側にしっかりとしたプロモーション力があったのでつくることができました。結果として、台湾での累計売り上げ部数は1万部を超えました。

それはすごい数ですね。

アーロン 『tokyo boy alone』の日本の販売を手がけているナナロク社から森さんの2作目の写真集『intimacy』が出て、それが木村伊兵衛写真賞を受賞しました。

森さんが受賞したのは『tokyo boy alone』のおかげだと思います。

アーロン 『tokyo boy alone』がブレイクの足がかりになって注目を浴びたとは思いますが、やっぱり彼自身の努力と積み重ねが実を結んだんだと思いますよ。

その後に北京のフォトグラファーの写真集を手がけていますね。

アーロン 「No.223」というのが彼のアーティストネームです。彼にとって、これが公式な初の写真集となりました。僕自身がエロティシズムに興味があるので、彼のエロスの表現に惹かれてつくったんですけど、この写真集はかなりアダルト向け(笑)。

以前にお話を聞いたときに、変わっている人だと言っていたような。

アーロン 変態まではいかないですけどね、露出性があるんで。写っているのは彼の友達で、いまの中国の若者のリアルが生々しく出ている。セックスがテーマで暴力感のある表現だから下品だと思われる。僕はむしろその下品さを際立たくて、ビニール袋に入れたり、zineみたいな作りが合うと思ったんです。ブックカバーの部分も、手垢にまみれたような質感を出すため、一冊一冊手作業でスタンプを押しました。袋を綴じているのは撮影スタジオなどでよく使われる黒いビニールテープです。こっちも一枚一枚人の手で切っています。